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“ガソリン200円”に現実味で岸田政権が右往左往 補助金縮小が「9月解散シナリオ崩壊」で大誤算に

総選挙で「リセット」できると思っていた?

 円安とガソリン価格の関係について、加谷氏はこう続ける。

「為替の影響がガソリン価格に反映されるには、実は3か月程度のタイムラグがあるといわれています。現下の円安の影響が出るのは実は年末から来年の年明けにかけて。ようするに、9月末の補助金縮小終了後も値上がりは続き、200円という水準が見えてくる。しかも、そこがピークかといえば、そう断言もできず、その後も上がってしまう可能性さえ否定できません」

 円安の要因は、日米の金融政策の「差」にあるといわれる。アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は7月下旬にさらなる利上げを決めたが、日銀は金融緩和について継続する方針。金利の安い円が売られ、金利が高いドルが買われ続ける構図だ。

「日銀の植田和男総裁は7月の金融政策決定会合で、利上げに向けた小さな一歩を踏み出したのですが、その直後から、安倍派の一部などから『アベノミクス(の金融緩和路線)を放棄するのか』という強烈な牽制球が飛んだ。独立性がある日銀といえども、与党が嫌がる政策を強く押し出すのは、当面は難しいと考えられます」(加谷氏)

 ただ、ちょっと待ってほしい。指摘はもっともだが、それほど政治の影響が強いなら、なぜ政府はアベノミクス路線を維持する、つまりは円安が続くことを容認しながら、その一方でガソリンの補助金を縮小したのか。ガソリン高騰を許容しているようにさえ見えるが、一方で今になって慌てて対応策を練ろうとしている。

 そんな疑問をぶつけると、加谷氏は「推測ですが」と断わってこう読み解いた。

「岸田政権の内閣支持率が上り調子だった春までは、9月までに解散・総選挙が行なわれるという見通しが濃厚でした。『負担増に多少の反発が起きても選挙で勝ってリセットできる』という打算が働いた可能性はある。ところが、直後からマイナ保険証のトラブルで解散は遠のき、自民党女性局長だった松川るい氏のエッフェル塔写真が炎上。選挙ネタもなくなったメディアは連日、ガソリン高騰を報じ、一気に焦りが高まったという印象です」

 与党は8月中に緊急対策をまとめるというが、何が出てくるのか。

「9月で期限を迎える補助金を延長するのが一つ。政府・与党には低所得者向けに限定する、という案もあるようですが、この慌てようでは、そこまでの設計は取れないかもしれません。あるいは、ガソリン税(1リットルあたり53.8円)のうち上乗せ分(25.1円)の課税を取りやめるトリガー条項を発動することも考えられます」

 ただ、「終了が決まっていた補助金の延長」も、「復興財源確保のために凍結していたトリガー条項の発動」も、政府・与党が一度は否定的な姿勢を示した方策を選択するという格好になる。判断の誤り、遅れを追及されて、岸田政権はさらなる窮地に陥っていく可能性さえあるだろう。(了)


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