定年後に物価が安い地方へ移住を考える人も多い。しかし、住み替えを甘くみてはいけない。60代で陥る予想外の支出の後始末について専門家に聞いた。
田舎で夫と最期まで 暮らそうと61才で移住
「老後の生活は誰にとっても“未知”。ですから、老後への不安は誰にでもあって、中でもお金の悩みは皆、深刻です」とは、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんだ。
人生には予想外の展開がつきもの。老後の蓄えができなかった、あるいは、用意していたのに足りなくなった、というケースは少なくないという。
今回の相談者・Aさん(64才)もそのひとり。両親の介護に奔走した経験から“老後はこんなふうに暮らしたい”とイメージを持って、夫と共有していたという。そして、2年半ほど前に東京から栃木県の那須へ移住を決めた。
「夫(57才)も私も将来は建物が林立する都会より田舎でのんびり暮らしたいと思っていました。夫は大好きなバイクでツーリングを楽しみ、大型犬を飼う。私は家庭菜園やみそ造りを楽しみたいと……。
そこで候補に挙がったのが栃木県那須町の別荘地でした。ここは空気や水がきれいなので、私の持病の喘息もよくなると思い、決断しました。夫が54才、私が61才のときでした」(Aさん・以下同)
Aさん夫婦は再婚同士。2人ずつ子供がいるが、全員が独立しており、老後を子供に頼る気はないという。