さらに厳しい状況にあるのが高齢の女性。別掲のグラフを見ても明らかだが、そもそもリーマン・ショック以前から、貧困に苦しむ女性は少なくなかった。それは、男性が外で働き、女性は家庭に入るという旧来の男女の在り方に由来する。上智大学文学部新聞学科教授の水島宏明さんが語る。
「長らく、女性は家庭に入って家族の世話をするのが当たり前とされてきました。たとえ働いたとしても給料は低く、仕事も補助的なものしか任せてもらえなかった。そのため離婚したり夫と死別したりすると、一気に生活が苦しくなる。リーマン・ショックの時点で、母子家庭の貧困率は50%を超えていました」
正社員でも、男女の賃金格差は大きく、非正規社員だとその差はさらに大きくなる。『ルポ コロナ禍で追いつめられる女性たち 深まる孤立と貧困』(光文社新書)などの著者でノンフィクションライターの飯島裕子さんが語る。
「働く女性の約6割が非正規雇用です。子育てや介護などを理由に非正規やパートしか選べないという人も少なくないでしょう。女性労働者は、“大黒柱”の夫がいるのだからいいだろうと賃金や待遇を低く抑えられ、“雇用の調整弁”として利用されてきました。これは明らかに差別です。男性の雇用も悪化しており、もはや“大黒柱”など存在しないのに、非正規雇用の女性を取り巻く状況は変わらない」
賃金の低さは老後の年金受給額の少なさにも直結する。若い頃から働き続け、厚生年金を40年近く払い続けてきたにもかかわらず、年金額が月10万円にも遠く及ばないのが当たり前という女性は決して少なくない。夫婦世帯ならまだしも、ひとり暮らしではかなり厳しい。
「働いていてもギリギリの生活なので、貯金もない。社会のシステム自体が、女性が貧困に陥りやすい形になっているのです」(飯島さん)
夫に先立たれた場合は遺族年金が支給されるが、生活の糧にはならない。
「遺族年金は夫の存命時よりも受給額は減額されます。夫が預貯金を残してくれていても、『5年もしたら底をついてしまう』という相談は珍しくありません。女性には生活保護のボーダーライン層がとても多いのです」(藤田さん)