8月下旬、朝9時の東京・品川駅。早足で行き交うビジネスマンたちに背を向けて「作業」を行う、10人の老若男女がいた。
「今日は暑いので30分程度で終わらせましょう!」
「車の近くのゴミを拾うときは、運転手さんに笑顔で挨拶するといいですよ」
リーダーらしき人物が声を上げる。よく見ると、彼らはそれぞれ大きなビニール袋とトングを手にしている。
指揮を執っていたのは、リユース事業などで現在年商49億円、14期連続で増収増益を記録する株式会社プリマベーラの創業者、吉川充秀さん(50才)だ。DVDの買取・販売のほか、現在は整骨院の経営など、幅広く事業を展開している。
商才にあふれる実業家である吉川さんのもう1つの顔が「ゴミ拾い仙人」。自身をCEOならぬ「CGO(最高ゴミ拾い責任者)」と名乗り、参加者を集めて「ゴミュニケーション」を実施している。
その日はなぜか路上に落ちていた木綿豆腐に一同大ウケ。道路わきでリップグロスを拾うと「広瀬すずちゃんが落としたのかも!」とジョークを飛ばし、またひと盛り上がり。「ボランティア」と呼ぶにはあまりに楽しげだ。
だがそもそもなぜ、生き馬の目を抜くようなビジネスの世界で成功してきた実業家が、早朝から「ゴミ拾い」をしているのだろう。