いつの間にか習慣化して“上機嫌”になれる
ゴミ拾いの効果を実感しているのは、吉川さんだけではない。大谷翔平選手(29才)がきっかけだったと話すのは、参加者の1人、大高陽子さん(26才)だ。
「大谷選手がゴミ拾いを習慣にしているという話を聞いて興味を持っていました。そんなときにたまたま吉川さんの講演を聴く機会があり、ゴミュニケーションに参加するようになったんです。
最初は人に見られるのが恥ずかしかったのですが、ゴミを拾っていると心が落ち着いてきて、次第に気にならなくなってきました。同時に、いままで日常生活でも人の目を気にしすぎるところがあった性格も、変わってきている気がします。人間関係の悩みもちっぽけに思えて、前向きな自分でいられるんです。
拾ったゴミの量で成果が可視化されるのもうれしい。自分のために始めたゴミ拾いなのに、通り掛かった人から笑顔で“ありがとう”“お疲れ様です”と言ってもらえて、 私も元気が出る。“上機嫌”が循環している感じがします」(大高さん)
吉川さんも、常に「上機嫌でいること」を何より大切にしているという。
「私の考える上機嫌とはすなわち“不機嫌でないこと”。不機嫌でなくなるには“がまんをしないこと”。仕事の一環や義務感でゴミ拾いをしても、ただつらいだけで継続は難しいかもしれませんね」(吉川さん)
あくまでも、自分が楽しむために、趣味としてゴミ拾いをすることが重要なのだ。
前出の陽子さんの母・里江さん(55才)が言う。
「娘に誘われて、最初は“ゴミ拾いなんて……”と、半信半疑で参加しました。ところが、続けるうちに楽しくなって、時には母娘で自転車で移動しながら5時間もゴミ拾いをしたことも。
以前は忙しくて医師に栄養指導をされるほど食生活が乱れていましたが、医師の指導自体がストレスになってなかなか改善しませんでした。ところが、ゴミ拾いを始めたら自然に生活習慣が整って、気づいたら4kgも体重が落ちていたんです。母娘でストレスが減って体力がついたのは驚きです。そして何より、娘の笑顔が増えたことが本当にうれしいです」