遺産相続で必要な相続税の申告には「タイムリミット」がある。相続税の申告と納付は被相続人の死亡を知った翌日から10か月以内に終わらせる必要があるが、遺言書がない場合はその期限内に相続財産の調査や相続人の確定、相続人を集めての遺産分割協議などすべての手続きを行なわなくてはならない。
納税通知書が届くことはないので、主体的に期限までに進めることになる。岡野相続税理士法人代表税理士の岡野雄志氏が指摘する。
「家族がもめて申告期限に間に合わず、ペナルティを科されるケースが少なくありません」
申告に間に合わないと、無申告加算税や延滞税を課されることになる。
「無申告のペナルティは一定の要件を満たせば、申告期限から1か月以内の申告は免れますが、1か月以上経つと相続税にプラス5%の無申告加算税が課されます。ただし、税務署の指摘で発覚した場合は15%、さらに追加の納付税額が50万円を超える分には20%の無申告加算税が科されます。
令和5年度の延滞税は納期限の翌日から2か月以内は年率2.4%、2か月を超える分は年率8.7%を科され、これを日割りで計算します」(以下、「」内は岡野氏)
もちろん、これらは本税(相続税)とは別途納めなくてはならない。対処法は「とにかく生前の準備が大事」だと岡野氏。
「被相続人には遺言書を残してもらい、相続人たちも話し合ってその内容に合意しておくことです」
遺産分割協議が終わらないなどの場合、とりあえず法定相続分で分けた想定で納税しておいて後から修正することもできる。とにかく間に合わせることが肝要だ。
※週刊ポスト2023年9月15・22日号