麻布の算数は数的なセンスを問う問題を出す。私も麻布の図形問題の解説動画を探し、視聴してみたことがあるが、各講師で違う解き方を説明していた。つまり、プロの講師でも最適の解き方が違うほど考えさせる問題なのだ。
NN麻布でなかなか上のクラスに上がれず、不安になったが、すでに週に6日、塾に通っているので、週末に家庭教師をつけることにした。
集団塾への支払いが月に10万円、個別指導塾に8万円、家庭教師は2万円。合計月に20万円を中学受験対策に支払っていた。
その額を聞いて、私が「そんなに払うんですか!」と声を出して驚くと、Bさんは不思議そうな顔をして、「そのぐらい普通ですよ。一番上のクラスにいる子はもっと払っています」と答えた。
中学受験がピークの子も
Bさんの長男は、結局、受験はうまくいかず、塾から「念のために受けておきましょう」と勧められていた四谷大塚偏差値52ほどの学校に進学をした。
妹も長男同様に幼い頃から勉強をさせ、小学4年から家の近くの面倒見のいい塾に通わせた。国語や社会は兄より成績がよかった。算数も基礎力は高いので、塾の勧めで、女子の御三家である雙葉を目指したが、結局、偏差値52ほどの女子校に進学をした。
この夫婦の子ども達の中学受験の結果を知って、不思議に思う。両親はともに東大卒で「勉強に向いた脳」を持っていたろうし、父親は相当なレベルで論理的な脳を持っているはずだ。その夫婦の子どもが二人とも「勉強に向いた脳」を受け継いでないということはないだろう。そして、子ども達は幼い頃から勉強をし、中学受験塾に入ってからの3年間、真面目に努力をした。
なのになぜ2人とも、第一希望どころか第三志望の学校にすら受からないのか。
実は、Bさんの夫も中学受験はうまくいかず中堅校に進学していた。Bさんの夫の母校から東大に進学するのは数年に一人である。もしかしたら「中学受験では中堅校レベル」の能力が遺伝したのだろうか。
Bさんの夫は東大に合格したぐらいなので、18歳の頃には論理的な思考力も暗記力も高かっただろう。ただ、12歳のときもそうだったかどうかは分からない。
中堅校から東大や国立医学部などの難関国立大に合格する生徒もしばしばいるが、彼ら/彼女らは中学受験のときに努力しなかったわけではない。ただ、中学受験の時点ではまだ知能が開花していなかったとも考えられる。
中学受験で難関校に受かるには、小学校の段階で抽象度の高い算数や国語の問題を読み解く必要がある。そして、その中学受験の段階で知能が開花しても、その先が順調とも限らない。