「ゼロで死ぬ」「貯蓄5000万円の夫婦が財政破綻した理由」ほか、テレビやネットでは老後の資金繰りに関するセンセーショナルなキャッチコピーが躍る。令和の始まりとともに「老後資金2000万円問題」も浮上したが、「そうは言われても実のところいくら必要なのか、さっぱりわからない」という人も多いだろう。
日本人全体で平均寿命が延びたとはいえ、依然として男女間の差は存在し、女性の平均寿命は男性よりも6年長い。つまり必然的に多くの女性が「おひとりさま」として生活することになる。
高齢者の単身世帯の平均貯蓄額をみると、60代で1151万円、70代で1128万円と意外に多いが、プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんはその実情に警鐘を鳴らす。
「実際にはおひとりさま世帯の3割は貯蓄ゼロだという調査があり、決して悠々自適とはいえません。貯蓄がないなら、働かなければ必然的に生活は成り立たなくなる。また、ひとり暮らしとなれば最終的には高齢者施設のお世話になるケースが多く、その際、費用はすべて自分で賄わなければなりません。
有料老人ホームの入居時費用の相場の平均は650万円ほどで、都心部なら4000万円にのぼるケースもある。また、入院の手続きや買い物なども自分でできなくなれば誰かに有料でお願いしなければならない場合もある。
最後にひとりになることが予想されるのならば、施設に入れるだけのお金は確保しておいた方がいいでしょう」(三原さん)
遺族年金だけでは月8万~10万円の赤字
特に年上の夫がいる場合、ましてや専業主婦だった場合には「もしも」のときのことを考えておくのは必須だ。5年前に夫を亡くした東京都在住の女性・Bさん(75才)がため息をつく。
「いわゆる“モーレツサラリーマン”だった10才上の夫を専業主婦として支え続けていたから、私個人の収入はゼロ。年金も大きく減額したうえ、夫任せにしていた退職金の運用は、銀行員にすすめられるがままに購入したらしい、高額で高リスクな金融商品に充てられていて、想定よりもはるかに少ない額になっていて。
生活が不安だから働きに出ることにしましたが、清掃やスーパーの品出しといった肉体労働しか募集がない。この年でさすがにしんどいです。夫が生きていたとき、もっときちんと話し合っていればよかったと後悔しかありません」