求人広告に応募し、面接の日時まで決まっていたのに、一方的にキャンセルされた──。こういったことは法的に問題ないのだろうか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
近所にオープンする飲食チェーンがスタッフを募集していました。仕事を探していたので応募し、面接の日程を決めましたが、面接の4日前に連絡があり、「募集人数に達しました」と面接を断られました。面接日程まで決めていたのに、定員に達したという理由でキャンセルするなんて許されるのでしょうか。店を訴えることはできますか。(東京都・38才・主婦)
【回答】
訴えるためにはその募集業者に対する法的請求権が必要です。業者が面接予定日に、採否を決定するための面接を実施し、あなたが面接を受けることを約束したのですから、業者はあなたに面接機会を与える義務があります。一方的に採用面接を中止したのは義務違反です。
業者が面接を中止した理由として、次のようなことが考えられます。
【1】最初から面接の都度、採否を判断し、採用人数に達すれば以後の面接はしない前提で募集していた
【2】応募者全員の面接終了後、採否決定の予定であったけれども、あなたの前に面接した応募者を気に入り、他所に行かないように採用を決めてしまい、あなたの面接が中止になった
【1】であれば、面接予定が後になった応募者は面接予定日を拘束されているのに、面接の機会を失うという不利益を被る可能性が最初からあるので、面接中止の可能性をあらかじめ告知すべきです。こうした告知をしないで面接をやめた業者の責任はより重いといえます。【2】の場合は、採用難の昨今ゆえ、従業員採用を焦った業者の立場は理解できますが、面接約束の違反は正当化されません。
相手方の義務違反で損害を被った者は違反者に対し、その賠償を求める請求権を取得できます。損害は賠償対象になるので、金銭評価できることが前提です。あなたが業者の義務違反で失ったのは採用面接を受けるチャンスだけです。採用されると決まっていませんから、そのようなチャンスを金銭評価することは不可能です。