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ファーウェイが5G対応先端半導体を独自開発で復活へ アップル、クアルコムの中国ビジネスに痛手

ファーウェイの新商品「Mate 60 Pro」への注目度は高い(Getty Images)

ファーウェイの新商品「Mate 60 Pro」への注目度は高い(Getty Images)

米国の規制強化が中国の半導体内製化を加速させる

 台湾に拠点を置く市場調査会社であるTrend Forceによれば、2023年4-6月期による世界のスマホ生産台数上位6社は、サムソン電子、アップル、OPPO、小米(シャオミ)、Transsion、VIVOの順である。3位以下はすべて中国企業で、4社合計のシェアは42.9%ある。華為技術は現在、トップ6圏外であるが、米国政府による先端半導体輸出規制の影響が出る前の2020年4-6月期、そのシェアは第1位となるなど世界大手の一角を占めていた。

 米国政府の規制が、クアルコムに対して先端半導体の華為技術への販路を断ったことで、華為技術に半導体の内製化を促し、中国政府に対しては国策として半導体の内製化を加速させる結果につながっている。この先、米国政府が中国への半導体、半導体装置の輸出制限を強化すれば、米国半導体関連メーカーの販路はさらに縮小し、中国製による代替を決定的に加速させかねない。米国による対中強硬策はアップルよりも、中国メーカーを主要顧客とするクアルコムなど半導体関連メーカーにとって、より影響が大きいであろう。

 米国のジーナ・レモンド商務長官は8月28~29日、北京を訪問、王文濤・商務部長などとの会談を行ったが、帰国後の記者会見において、「米国は引き続き中国に対して半導体チップの販売を続ける。それは米国の利益にかなうからだ。ただし、米国は永遠に中国に対して最先端のチップを販売することはない」と発言した。

 これに対して中央テレビ局など複数の本土マスコミは7日、米国半導体産業協会(SIA)のジョン・ニューファー会長の過去の発言を紹介し、批判している。

「半導体産業は中国を必要としている。中国は我々のサプライチェーンの重要な組成部分であり、同時に我々にとって重要な顧客グループでもある。もし、国家が己の力をたよりにサプライチェーンを捻じ曲げようとすれば、コストは高まり人々は購入を尻込みしてしまう。さらに、イノベーションの力も落ちてしまう。国家も、企業もサプライチェーンを捻じ曲げるようなことはできない」(中央テレビ局ニュースより)

 米国政府の対中強硬政策は根本的な見直しが必要となるかもしれない。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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