【2】9月9日に報道された植田日銀総裁の単独インタビュー
日本銀行の植田和男総裁は、読売新聞の単独インタビューに応じ、その記事は9月9日に公開されました。記事中で植田総裁は、大規模な金融緩和政策を維持しつつも、物価上昇が確信できる段階になれば「マイナス金利解除も選択肢に入る」との考えを示しました。この発言により、年内に金融政策が変更される可能性がマーケットで再び意識されました。
週末に発表された記事を織り込んだのは、週明け9月11日の為替市場です。午前6時の市場オープンとともに、急速に円高方向へと動き、わずか数分で1円以上の円高となりました。
為替介入が実施されると金融政策にも影響
今の為替市場では、ドル円相場が上昇トレンドを示し、円安が進行しています。口先介入の効果には限界があり、今後も急速な円安が進行すれば為替介入実施の可能性が高まり、実施された場合には強い円高圧力になります。また、マイナス金利解除の実施が想定されれば、こちらも円高圧力が高まります。
いま最終局面に差し掛かりつつあるアメリカの利上げ政策、コロナ後に進むインバウンド消費への影響を考慮すれば、政府や日銀の思惑としては、円安に歯止めはかけたいものの急速な円高進行は避けたいところでしょう。
為替介入もマイナス金利解除も、実施された場合は急速な円高進行が予想されます。特に為替介入については、円安を食い止めるためにはドル売りの介入となり、日本の都合だけで決められることではありません。加えて、急激な円高は短期的な企業業績だけでなく、回復傾向にある景気を腰折れさせることも懸念されます。
こういった理由から、為替介入もマイナス金利解除も、極めて慎重に検討する必要があり、どちらも年内に実施されるという可能性は低いのではないかと私は考えています。今回、植田総裁がマイナス金利解除の可能性について言及したことは、円安進行を落ち着かせる口先介入同様のアナウンス効果を狙ってのこととも考えられます。
仮に足元の円安がさらに進行して介入せざるを得ない状況となると、今後の金融政策に影響があるかもしれません。急激な為替の変動は当然株式市場にも大きな影響を与えるでしょう。