SNSが普及して「見えないいじめ」がはびこる一方、教師たちは労働過多で余裕がない。心配事が絶えない教育現場で、「スクールロイヤー」という制度が注目を集めている──。
「娘へのいじめの発端はクラスのリーダー的な存在の女の子と“推し”のアイドルがかぶってしまったこと。SNSの匿名アカウントで悪口を投稿されました。担任の先生に相談すると、『証拠がない』とその場では取り合ってくれなかったものの、後から『スクールロイヤーの先生に相談します』と言ってくれました」
そう振り返るのは、中学2年生の娘を持つ会社員の女性・Aさん(45才)。Aさんが担任に相談してから間もなく、全校生徒と保護者を対象とした弁護士による講演が行われた。
「講演の内容はSNSをきっかけとした自殺事件や誹謗中傷によって起きる不利益、匿名だと思われているが、開示請求をすれば個人の特定が可能であることなど、いじめをした側にやんわりと警告をするような内容。最後にはダメ押しのように『現在、SNSの投稿などで悩んでいる人がいたら相談に乗ります。いつでも連絡してください』という発言もありました」
その日を境にAさんの娘に誹謗中傷を繰り返すアカウントは次々と閉鎖された。
「結局、謝罪もなく逃げきる形になった加害生徒には腹が立ちますが、攻撃されなくなって、娘には笑顔が戻ってホッとしています」(Aさん)
いま学校で起きた問題を、弁護士が解決に乗り出す事例が増えている。Aさんのケースのように、教育委員会や教員が校内で起きた問題を弁護士に相談する「スクールロイヤー」制度は、多くが自治体主導で導入されている。