東京都心や湾岸エリアにそびえ立つタワーマンション。セキュリティーシステムの充実や、行き届いたバリアフリー化など、高齢になっても住みやすいように感じられる物件が多く、シニア層からも人気だ。ところが、シニアのタワマン入居には思わぬ“落とし穴”もあり、入居後に「後悔している」と嘆く声も聞こえてくる。
5年前、勤め先を退職したことを機に東京郊外の一軒家から港区のタワマンに夫婦で引っ越した男性・Aさん(70歳)はこう話す。
「玄関から寝室まで、ずっと真っ平らで、つまずく心配も少ない。廊下もある程度広く取られているので、万が一車椅子になっても安心だと思って購入したのですが、大きな落とし穴があったんです」
Aさんは健康のために毎朝ウォーキングをしている。帰宅後はすぐにシャワーを浴びるのだが、先月、シャワーの最中にその場で失神してしまった。
「今年の夏の暑さもあり、脱水状態だったのだと思います。そのまま温かいシャワーを浴び、さらに脱水が進んだようで、しばらく風呂場で気を失っていた」(Aさん)
異変に気付いた奥さんが駆けつけたのだが、風呂場の扉は内開きで、うずくまるAさんの体が邪魔になり、開くことができない。
「妻がドアの隙間から手を伸ばして私の体を揺すっているうちに気がついて事なきを得たのですが、大変なのはここからだったんです」(Aさん)
Aさんが購入した物件のバスルームは内開きの1枚扉だったがゆえに、扉が倒れたAさんの体に当たり、完全に開くことができなかった。真ん中が屏風のように折れる構造の扉(折れ戸)に取り替えれば、こうしたリスクも軽減されるはず。Aさんは今後のためと思い、メーカーに扉の交換について問い合わせた。
「ユニットバスのメーカーは誰でも知っている大手だったので、安心していたのですが担当者は“部品がないから工事できません”って言うんです」(Aさん)