中国で金価格の上昇が続いている。上海先物市場の金価格(中心限月)は昨年秋以降、はっきりとした上昇トレンドを形成しており、足元では9月15日、過去最高となる480.26元/グラムを付けている。
中国の金融政策は欧米とは異なり、緩和政策が続いている。金利が低下傾向にある中で、金への投資が相対的に有利になっている。
さらに、個人投資家の立場からみれば、そもそも中国の消費者は国民性として、金装飾品に対する購入意欲が強いと言われている。その上、有力な投資対象である不動産市場は低迷が続いており、株式市場も2022年の低迷から完全には抜け出せてはいない状況だ。いくつかの要因が重なって、資産としての金への需要が高まっている。
政府の立場からみれば、中国は国際戦略として人民元の国際化を進めている。地政学リスクの高まり、米中関係の悪化もあって、貿易決済、投資における脱ドル化を加速させる動きがあり、中国人民銀行は預金準備として金の保有を増やしている。
中国人民銀行は2023年8月現在、預金準備として金の保有量を10か月連続で増加させており、この間の増加量合計は217.10トンに及ぶ。外部環境に大きな変化がない限り、国家による金の購入は今後も続く可能性が高いだろう。
もっとも、これは中国市場での話である。日本の投資家にとって関心があるのは、国際市場における金価格の動向や見通しであろう。