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いじめ、事故、停学・退学処分、体罰…学校トラブルの弁護士への相談が増加 複雑な事情が絡む学校現場での「落としどころ」

 つまり、悩む子供が10人いたら、その解決策は10通りあるということ。実際の学校現場では、何を「落としどころ」としているのか。女性・Aさん(52才)の小学4年生の娘は、同じ登校班の上級生からいじめにあっていた。

「上級生たちの言い回しが巧みだったので、軽度の発達障害がある娘は彼らの悪意に気づいていなかった。しかし、娘が私の財布からお金を持ち出して上級生に渡していたことに気がつき、そこから事態が発覚しました。まず上級生たちの保護者に連絡しましたが取り合ってもらえず、校長に相談すると『校内で起きたこと以外、学校は介入できない。当事者同士で解決してほしい』と言われてしまった。そんなときに、教育委員会の会報でスクールロイヤーの存在を知ったんです」

 Aさんが教育委員会に連絡すると、担当の弁護士を紹介されたという。

「弁護士さんが上級生の保護者に再度連絡して『精神的苦痛や金銭被害、突き飛ばされてけがをしたことなどについて損害賠償をするために、Aさんから正式に依頼を受けた場合は、防犯カメラやドライブレコーダー、目撃証言などを用いて事実関係を調査します』と話すと、相手の保護者は『行き違いがあったようだ』と弁解し、いじめはピタリとやみました」(Aさん)

必ずしも「損害賠償」が正解ではない

 米澤さんによれば、学校の問題に司法が介入した場合、その後取り得る法律的な手段は大きく2通りに分けられるという。

「慰謝料などの損害賠償を求めるような民事的なものと、処罰を求める刑事的なもの。例えばいじめの場合、暴力を振るわれれば暴行罪に、根も葉もない噂を流されたら名誉毀損罪や侮辱罪にあたることもあり、いずれも刑事事件になります」

 学校事故の場合は、責任の所在が明らかになれば治療費などを支払うことで解決につながるが、そのほかのケースでは法的な手段に基づく解決が必ずしも適切でないことも多いと、米澤さんは続ける。

「学校問題の主役はあくまでも子供。いじめで悩んでいて不登校になっているのであれば、その状況を改善し、再び通えるようにすることがいちばんの解決策です。

 そのためすぐに法的手段に出るのではなく、保護者と学校との交渉に関して弁護士が全面に出ずにアドバイスをするなど“後方支援”に徹することも少なくありません。弁護士が介入する場合にも、民事的、刑事的な手段ではなく、子供の環境を調整するという形で関与していくこともあります」(米澤さん・以下同)

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