SNSが普及して「見えないいじめ」がはびこる一方、先生たちは労働過多で余裕なし。いま、子供を取り巻く状況は大きく変化している。心配事が絶えない教育現場で、頼るべきは「司法の力」だ。いま学校で起きた問題を、弁護士が解決に乗り出す事例が増えている。教育委員会や教員が校内で起きた問題を弁護士に相談する「スクールロイヤー」制度は、多くの自治体で導入されるようになった。
群馬県の前橋市教育委員会は全国に先駆けて2020年に運用を開始している。現在、4人の弁護士がスクールロイヤーとして登録し、市内71の学校・幼稚園を担当しており、相談件数は年を追うごとに増加しているという。前橋市教育委員会教育支援課青少年支援センター指導主事の井上剛文さんが語る。
「スマホの普及や保護者の考え方が多様に変化したことなど、いまの子供たちを取り巻く状況はとても複雑化しています。特にSNSによるいじめはもはや珍しくなく子供同士のトラブルが保護者間のトラブルに発展するケースもある。あらゆる問題が起きる教育現場で、法的な側面から弁護士に助言をもらう機会は増えています」
「いじめは犯罪」という現実が可視化された
「子供のしたことだから」「愛の鞭(むち)」「友達同士のじゃれ合いで悪気はない」――それまで「教育」という名の下、うやむやにされてきた学校を取り巻く諸問題に司法という名のメスが入ったことで、今後現場はどう変わっていくのか。
2018年4月から5月まで放送された、スクールロイヤー制度をテーマにしたドラマ『やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』(NHK)の脚本を担当した浜田秀哉さんはこう語る。
「例えば暴力や中傷は一般社会で起きたられっきとした『犯罪』なのに、学校で起こると『子供の未来のために』と、事なかれ主義的な解決方法がとられてきた。そこに明確なルールを持った第三者が解決に入ろうとすることで問題を『事件』として浮き彫りにすることができたという変化は大きいのではないかと思います。
また、地毛が黒ではない生徒が髪を黒く染めるよう強制されるといった不適切な指導も、“ブラック校則”などとして表沙汰になるようになりました」