コロナ禍が落ち着き、今年のお彼岸は久しぶりに先祖の墓参りに行くという人もいるだろう。そこでわき上がる悩みは「いつまでこのお墓が守れるのか」ということ。距離、費用、体の自由、そして親族との関係──そんな「お墓の悩み」を持つ人たちの“最後の砦”があるという。
一昨年、妹と東京に住んでいた母が急死したという、秋田県の女性・Mさん(57才)が当時を振り返る。
「コロナ禍まっさかりだったため、母の葬儀は東京で行い、私たち親族はリモートで出席しました。その後、秋田の菩提寺に納骨するため妹が新幹線で遺骨を持参することになったのですが、数日前になって親戚の1人が“東京の人間なんかが来たら、コロナをうつされるに決まってる!”と騒ぎ出して……。
だけど、遺骨をいつまでも家に置いておくわけにもいかないし、当時はいつコロナが終息するかもわからなかった。なんとかして母の骨を故郷の秋田に送ってあげたいと住職に電話で相談したところ『ゆうパック』でお寺に送っていいと教えてもらったんです」
妹に伝えると1週間も経たないうちに、厳重に梱包されて「遺骨」と書かれた送り状を貼った段ボール箱が菩提寺に届いた。
東京セレモニー取締役でエンディングアドバイザーの栗本喬一さんによれば、葬祭業界では、ゆうパックで遺骨を送れることはもはや“常識”だという。
「私が知るだけでも、これまでに何百と“ゆうパック葬”の事例があり、もう珍しいことではなくなっているように感じます。コロナ禍などの影響もあり、最近は郵送したお骨を受け入れてくれる寺院も増えているのです」(栗本さん)
実際に現在、送骨を受けつけている寺院は多い。金額にも差があり、従来通り持ち込みで戒名つきの納骨が5万円前後なのに対し、送骨のみで戒名を希望しない場合、2万5000~3万円ほどになる。
送骨での供養を受けつけている本寿院(東京都)の住職、三浦尊明さんが明かす。
「2015年から約350柱ほどゆうパックで遺骨を受領しています。昨年はコロナの影響か、年間80柱ほどに増えました。こちらから梱包材を入れた段ボール箱をお送りし、お骨を入れて送り返していただく仕組みで、破損はほとんど報告されていません」