本寿院では、前出のMさんのように遠距離であったり、身体的な理由で直接お骨を持参できないケースのほか、“行き場のないお骨”が送られてくる事例も少なくない。
庭にお墓をつくったり勝手に散骨したりするのは、墓地埋葬法に違反する可能性が高く、お骨を“持て余す”人もいるのだ。
「自宅で長い間遺骨を置いたままになっていたかたや、秘密にしたい水子の遺骨を持っているかた、墓じまいをして遺骨の受け入れ先に困っていたかたなどに大変喜ばれています」(三浦さん)
“ゆうパック葬”は本寿院のように送骨後に合葬墓で供養してくれる寺院への送付のほか、海洋散骨代行業者への送付に使われるケースも多い。その背景には「墓じまい」の増加と、それに伴う負担があると栗本さんは言う。
「この少子高齢化社会においてお墓の存在が負担になり、墓じまいをして寺院や霊園に供養を任せる『永代供養』を希望する人が増えています。ところがそのためには、祀られている人たち全員の改葬先を見つけて、物理的に移動させる必要があります。
もし、先祖代々続くお墓で、10柱以上お祀りされているといった場合、1柱ごとに改葬手続きをする必要があり、それぞれ費用や手間がかかります」(栗本さん・以下同)
「足が不自由だけれど、なんとか墓じまいしたい」「認知症の母の“父の遺骨を新婚旅行で訪れた思い出の海に散骨したい”という願いを叶えたい」など、寺院に出向くことができない場合や、個人では実現が難しい供養も送骨できれば解決することもある。
梱包前に必ず「乾燥」させる
そんな“もしものとき”のために、送骨の方法を覚えておきたい。
まず知っておくべきは、いまの日本で送骨が可能なのは日本郵便の「ゆうパック」のみだということ。佐川急便やヤマト運輸といったその他の業者がいずれも約款等で遺骨を受け入れ不可としている一方で、日本郵便だけは大手運送会社の中で唯一、遺骨の配送を受けつけている。
一説によれば、かつて戦没者の遺骨を郵送で返却した経緯から、いまも郵便局だけが運送を受け入れているともいわれている。
実際に栗本さんが日本郵便以外の大手運送会社に問い合わせたところ、各社とも「今後も遺骨の運送を受け入れる予定はない」との回答だった。ゆうパック葬はいわば「お墓に悩む人のための、唯一のセーフティーネット」なのだ。