酒税法改正により、ビール系飲料の「価格差」が段階的に小さくなっている。現在はビール、発泡酒、新ジャンル(第3のビール)でそれぞれ税額が定められているが、2026年10月からは350ml換算で54.25円に一本化される予定だ。酒税が低いことから「庶民の味方」として親しまれてきた第3のビールは、今年10月に、2020年10月に続く2回目の税額アップとなる。増税による値上げは家計への影響も大きく、それがきっかけで家庭内のトラブルに発展することもあるようだ。第3のビールで毎晩晩酌を楽しんでいる40代男性会社員が直面したケースを、ライターの吉田みく氏がリポートする。
* * *
10月から新ジャンル(第3のビール)の税金が、350mlあたり9.19円値上げされる。その一方、ビールの税金は350mlあたり6.65円の値下げとなった。財務省は〈類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、税収中立の下、酒税改正を実施〉するとしている。
普段から第3のビールを飲む習慣のある人にとって、今回の税制改定は家計を直撃する大きな問題である。それによるプチトラブルも珍しいことではない。妻と高校生の子を持つ、神奈川県在住の会社員・ススムさん(仮名、45歳)は、第3のビールの増税前に買いだめをしたことがきっかけで、妻と意見の食い違いが生じてしまったという。
「価格の安さに惹かれて飲み始めた第3のビールとの付き合いは10年近くになります。ビールと比べると味が劣るんじゃないか……などと、最初は不安もありましたが、今では飲みやすくて美味しい第3のビールの虜です。毎日500mlを1缶は飲んでいる身としては、今回の値上げのニュースはショックでした」(ススムさん、以下同)
ススムさんのビール代は家計から出ていることもあり、夫婦間で「1日1缶まで」と約束しているそうだ。妻はお酒を飲まないため、ススムさんは毎晩ひとりで晩酌をしているという。
「仕事のストレス発散のため、晩酌は大事な息抜きになっています。夕飯をつまみながら第3のビールを飲む……。こんな些細な楽しみすらも奪われるような出来事が待っていたんです」
最近、「第3のビール値上げ」のニュースを聞いた妻が敏感に反応。ススムさんへ“晩酌自粛”を求めてきたというのだ。