しかし、財産を生前に贈与すると、相続したときに贈与が相続人に対する場合は10年、それ以外の者への贈与では1年を経過していれば、もはや遺留分の権利を主張できなくなります。他にも相続人の地位を奪う廃除という制度もありますが、これは虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行をした場合に、家庭裁判所に手続きを申請するもので、ご質問の場合には認められることはありません。
そして、親子関係から回避できない最大の問題が扶養です。直系親族には互いに扶養をする義務があるので、年老いた父親が生活に困窮した場合、子には親を扶養する義務があり、勘当されてもこの義務は残ります。扶養の程度や分担は、関係者で協議ができなければ家庭裁判所が定めますが、その際、一切の事情を考慮するため、父親が「勘当」して親子の事実上の縁を切った事実は、あなたの負担分を多少は減らす効果はあるでしょうが、免責はないと思います。
意地を張らず、よき夫婦となり、お父さんの理解を得ましょう。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2023年10月20日号