2030年代には現行の半数以下に激減?
長時間労働で所得が少ないとなれば、若い人から敬遠されて平均年齢は高くなる。厚労省の調査では、バス運転手の平均年齢(2021年)は53.0歳で、全産業の43.4歳とは10歳ほどの差がある。日本バス協会の資料によれば、全バス運転手に占める60歳以上の割合は23.3%(2022年7月末時点)となっている。
人手不足に輪をかけそうなのが、「2024年問題」である。働き方改革の一環として2024年4月から自動車運転業務にも時間外労働に規制がかけられる。
大型二種免許が必要なバス運転手の育成は簡単ではないが、日本バス協会の資料によると2020年の免許保有者は84万7769人で、2006年の113万4485人の4分の3でしかない。
2020年を年齢別に見ると、39歳以下は4万2864人でわずか5%ほどである。これに対して60代は20万2094人、70代以上は28万1281人で、両者で全体の57.3%を占める。近年の出生数の急落を踏まえれば39歳以下の保有者が劇的に改善することは考えにくい。
仮に、現在60代以上の運転手の大半が70代半ばまでに引退したとするならば、2030年代半ばには現行の半数以下となる。2030年度にはバス運転手が3万6000人不足するとの試算がある。大型二種免許保有者がすべてバス運転手というわけではないが、不足数は試算よりも厳しくなる可能性がある。
公共交通機関が止まると「外出率」も低下
路線バスの廃止・減便が社会に及ぼす影響というと「買い物難民」や「通院難民」に目が向きがちだが、そんな単純な話ではない。
住民に一番身近な路線バスというのは、人間に例えるならば血液を隅々にまで行き渡らせる「毛細血管」だ。血が通わなくなれば壊死が始まる。路線バスは鉄道や飛行機とも密接に結びつき一体的な交通網を築いているので、いずれ日本全体の動脈が壊れていくこととなる。ただでさえ人口が減少していくというのに、人々の動きが滞るようになれば日本経済にとって致命傷となりかねない。