「人手不足」が叫ばれるなか、60代以降のいわゆる定年後世代も働き続けるのが当たり前の時代が到来している。しかし、年齢を重ねてからも「若い頃と同じような働き方」にこだわっていると、セカンドキャリアの入り口でつまずいてしまうこともあるという。
シニア専門転職支援会社「シニアジョブ」代表の中島康恵氏は「正規採用にこだわらず、『非正規のメリット』にも目を向けるのが成功への早道だと考えています」と語る。どういうことなのか――。
家具の専門商社で長年営業畑を歩んできた男性・A氏(61歳)は次のように話す。
「自分の力を試してみたいという思いもあり、2年ほど前から会社に許可を取ってセカンドキャリアのための求職活動を始めました。ところが、なかなか思うような再就職先が見つからない。結局、(60歳定年以降も)再雇用のかたちで元の会社にとどまっています。慣れ親しんだ職場なので気楽ではあるのですが、同期のなかには他社に正規採用されてバリバリやっている者もいるんですよ。私も、もっと粘ればよかったかなと、今は少し後悔しています」
A氏の場合、長年勤めてきた会社に不満があるわけではなかった。営業という職種も自分に合っているとの思いがあったという。ただ、「還暦といえばかつては老人の仲間入りでしたが、自分としては気力、体力ともに40代の後輩に比べても遜色ないと思っています。だからこそ、もう一花咲かせてみたい」(A氏)という考えから、別会社での再就職の道を探ったのだ。
シニア世代は即戦力だが…
A氏が60代以降のセカンドキャリアのスタートでつまずいてしまった理由はどこにあると考えられるのか。前出・中島氏はこう解説する。
「立派な会社でキャリアを積んできた人材のなかには正規採用にこだわったために、再就職市場で出遅れる人が一定数いらっしゃいます。実は、シニアだからこそ、派遣やアルバイトなどの非正規からキャリアアップを目指すという選択肢が有力になるという側面もあるのです」