また、解除されたとしても、短期金利は0~1.0%程度にとどまる可能性が高いです。日本の中立金利(経済を温めも冷ましもしない金利)は0.5%付近と言われているなかで、経済へのブレーキとなるような、中立金利を大きく上回る利上げは考えにくく、短期金利が大幅に上昇することはないでしょう。
米国では利上げを重ね、現在6%に迫る政策金利になっていますが、日本経済の状態を踏まえると同じように考えるのはいささか短絡的です。米国は賃金の上昇と物価の上昇が一緒に起こる景気の過熱サイクルにあるため、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は大幅な利上げによるブレーキをかけたのです。景気が過熱しているとは言えない日本で大幅な利上げをすることはありませんし、日本の大幅利上げは、風邪から回復しつつある患者に水をぶっかける行為に等しいです。
したがって万が一にもマイナス金利が解除されたとしても短期金利の上昇は限定的で、住宅ローンの変動金利へのインパクトは限定的と考えられます。
変動金利が有利と考えられる理由
金利が上がるかもしれないので変動金利は危ないと発言する方は一定数いますが、住宅ローンは総返済額が抑えられる変動金利が有利という私の考えは変わりません。
すでに説明したように、日銀はマイナス金利をいつかは解除しますし、それはそう遠くない未来かもしれません。しかし、景気に急ブレーキをかけるような大幅な利上げを行う可能性は非常に低いでしょう。
現在、変動金利は0.4%程度、固定金利は1.8%程度です。利上げ局面に転じて最終的には1回0.25%程度利上げされるようになると仮定すると、変動金利が上昇し、現状の固定金利と同程度の水準になるには7回程度の利上げに相当します(下グラフ参照)。とはいえ7回も利上げして、短期金利をマイナス0.1%から1.5%にするほど日本経済は過熱していません。
ちなみに2000年以降、日銀は利上げを2回行っていますが、そのときでも最大で0.5%への利上げにとどまっています。
そのため将来、変動金利が上昇したとしても、現在の固定金利の水準を超えることはまず考えられないのです。仮にもし1.5%程度まで上昇したとしても、果たしてそれが35年間続くのか、という観点もあります。景気には波があり、必ず景気後退局面が訪れます。一般に景気後退局面では利下げが行われますので、35年間も利上げされっぱなしになるというのはちょっと考えづらいでしょう。