鉄道は、多くの人にとって交通の手段としてだけでなく、趣味や娯楽の対象としても親しまれており、ときに人々の知的好奇心を刺激してくれる。交通技術ライターの川辺謙一氏による連載「鉄道の科学」。第15回は「架線の張り方」について。
直線区間では架線はまっすぐ張られていない
電車が走る線路には、架線(かせん)と呼ばれる電線が中空に張られています(一部路線を除く)。これは、電車に電力を供給するための電線で、沿線に設置された変電所とつながっています。
直線区間では、架線はまっすぐ(直線状)ではなく、レールに対して左右にジグザグになるように張られています。厳密に言うとこれには例外がありますが、列車が高速で走る新幹線や、つくばエクスプレスのような近年建設された鉄道では、基本的に架線がジグザグに張られています。
この記事のトップに載せた写真は、つくばエクスプレスの直線区間で撮影したものです。これを見ると、中空に張られた架線がジグザグに張られているのがわかります。
なぜ架線をジグザグに張る必要があるのでしょうか。今回は、その謎に迫ってみましょう。
パンタグラフとすり板
結論から言うと、パンタグラフのすり板の摩耗を分散させるためです。つまり、すり板がまんべんなくすり減るようにするために、架線をジグザグに張っているのです。
……と書くと、わかりにくいと感じる方はいらっしゃるでしょう。そこで、パンタグラフの構造にふれながらくわしく説明します。