ところが、ロシアのウクライナ侵攻に伴うロシア産水産物の禁輸などによる水産物価格の上昇、漁獲量の減少に加え、急激な円安の影響による大幅なコスト上昇で原価率が押し上げられている。そうした問題の影響により、これまで1皿100円でも利益が出ていたイカ、タコ、エビといったネタですら、利幅が薄くなっています。
なかでも子供に人気があって売れ筋、かつ原価が安かったサーモンのような商品が利幅を大きく減らしているのが一番の問題ですね。一方の客の満足度をアップさせるウニやいくらは高すぎて、もはや回転寿司では扱うことができないネタになりつつある」
レーンに皿を流せなくなった
業界1位の「スシロー」を展開するFOOD & LIFE COMPANIESが今年8月に発表した2022年10月~2023年6月期の連結決算では、売上収益は2189億円と前年比3.3%増だったが、営業利益は79億円で前年比35.9%減となった。前出・業界紙記者が言う。
「国内スシロー事業だけでは売上収益は10.8%減、セグメント利益は76.4%減となった。円安などによる食材調達コストの上昇、物流費、地代、人件費の高騰に加え、今年1月には客が店内で醤油差しを舐めたり、レーン上の寿司に唾液をつけるなどした迷惑動画の問題があった。騒動による売上減、安全対策への設備費も大きかったとされます」
迷惑動画の問題は業界全体に影響を与えた側面もあるという。「スシロー」では回転レーンにタッチパネルからの注文品以外は流さないようになった。他の大手回転寿司チェーンでも、高速レーンや店員が直接届けるなどの手段での提供が広がった。回転レーンに商品を流す「くら寿司」では、従来通りの抗菌寿司カバーを使いながら、不審な行為を監視するAIカメラシステムの導入など、設備投資も行なっている。ある回転寿司の店長が言う。
「レーンに流している皿は食欲を刺激し、お客さんがつい手を伸ばしてしまう心理にする効果を狙ったもの。こんなネタもあるという店側のアピールにもなる。そして何より、商品をレーンに流す最大のメリットは、オーダーがさばききれないピーク時に食事ペースを上げてもらえるという点です。それができなくなったことで、特に時間がない昼飯時のお客さんの回転率や収益がかなり落ちましたね」