最近は“置き配”が定着しつつあるものの、配達員が直接対面で荷物を届ける機会も多い。この時、受け取る側の“服装”が、配達員に不快感を与えることもあるかもしれない。こういったケースを規制することはできないのだろうか。上半身裸で荷物を受け取る男性に困っている女性配達員からの実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
女性の宅配業者です。今年の夏は異常な暑さだったせいか、荷物を届けに行くと、独身男性(だと思う)の多くが上半身裸でドアを開けます。これは女性にとって、なかなか辛い状況だったりします。法的にどうこうの事案ではないですが、自治体で受け取りの際の上半身裸はNGといった条例を作れませんか。
【回答】
裸体を人前にさらすことが、法的に問題になる場合として、まずは性欲を刺激して満足することを目的とし、通常の人の性的羞恥心を害するような態様で、公然と裸体を見せれば、刑法の公然わいせつ罪を構成することがあります。
人前で性器をさらして喜ぶ類の人が、これに当たります。自宅の玄関であったとしても、女性の来訪者に見せつけようと待ち構えていたのであれば、性欲を満足させるために不特定人相手の行為として公然性も認められると思いますが、見せたのが裸の上半身で、しかも今夏の異常な暑さなら、およそわいせつ性はないでしょう。
より軽い罪を罰する軽犯罪法では、「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」が処罰されますが、玄関先は「公衆の目に触れるような場所」には当たらないので無理だと思います。