飲食店の困った客というものは時々存在するが、そうした客は「客に対して店員は最大限のサービスを施すべき」と考えている節があるようだ。それは特に女性の店員(店主)が仕切っているような店に顕著だと、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は考える。これまでに様々な飲み屋で店員の愚痴を聞いてきたという中川氏が、「困った客」の実態を報告する。
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典型的なのが、スケベ根性を持っている男性です。美人の女性店員を目当てに通うものだから、半分ガールズバー的にカウンターで喋り続ける。普通の居酒屋であろうともその姿勢は崩さない。本来、居酒屋の店員は料理を作り、客にそれを渡すのが仕事。もちろんある程度の会話は当然あってもいいのですが、困った客は延々と目当ての店員相手に喋り続け、何だったらこのまま口説いてしまうかウヒヒ、的な状況に持ち込もうとするのです。
ある時、私が40代中盤の美人と評判の居酒屋経営者と2人きりになったことがあります。「いつも来てるNさんっているでしょ? 中川さん、すいませんね」と言われたので「どういうことですか?」と聞いたらこう答えました。
「あの方がずっと喋っているので私もその相手をしなくてはいけません。中川さんのビールが空になりそうな時とか、注文したいんだろうな、とこちらも察するのですが、Nさんがずっと喋っていて、中川さんも注文を遠慮しているような状況を何度か見てきました。本当は私もすぐに対応したいのですが、Nさんの『圧』が強すぎて私もそこに付き合わざるを得ないのです。本当に申し訳ありません」
もちろんNさんは店にとって大切な常連客です。ただ、他の客が数組いたとしても、「ワシはこの店No.1の常連だから、当然女将はワシに対して最優先で対応すべきである!」といった感覚を持っているようです。
Nさんはボトルキープもしていて、上客であることは間違いありません。とはいっても、他の客への対応ができないぐらい女将を拘束するのは問題ではないでしょうか。