劣等感こそ抱いていたが、決して“できない子”ではなかった。
小学2年生でそろばん3級合格。幼少期から踊り・琴・オルガン・ピアノを習い、民謡教室で民舞の名取も取得。むしろ多彩にして多才だった。彼女が情熱を注いだ歌では、『君こそスターだ!』(フジテレビ系)のオーディション合格を機に、歌謡学校に高2から通い、20才のときに『NHKのど自慢』金沢地区大会で優勝した。
「歌は“ダメな私”が“輝く私”になれる魔法の杖。ただ当時はアイドル全盛期で、ブスな私は低い鼻をひっぱってばかりいました(笑い)。
母も子供をほめず、『うまくいく方が奇跡なんだから、分相応にしなさい』と戒めるタイプでした。お陰でどんな嫌なことがあっても切り替えが早く、逆境に強くなれたのかもしれません」
「お宅に貸したお金を返してほしい」
高校卒業後は、地元の自動車ディーラーに就職した。そろばんで約160人の給料計算をし、社長の運転手もこなした。女性が少ない業界ながら周囲から頼りにされ、充実した日々を過ごしていた。そんなとき、明暗が反転するようなことが起きた。
「私が23才のときです。私の勤め先に借金取りがやって来たんです。『お宅に貸したお金を返してほしい』と見知らぬ男性からいきなり言われ、私は頭が真っ白になってしまいました。
父親はもともと病気がちだったんですが、経営するクリーニング店が芳しくなく、火の車だったことをそのとき知りました。消費者金融15社に想像以上の借金があったそうです。父も母も苦境を娘たちに知らせず、気丈に頑張ってきましたが、ほどなく力尽きてしまいました。
そして、返済のため家を失い、父と母は離婚しました。
振り返ると、父はどこか『生命力』に欠けた人だったのかもしれません。お金の苦労が重なると胃潰瘍になったりしていましたから。
そのとき父は自殺も考えていたそうです。でも私は『私が助けるから。自殺者の娘にしないでよっ』と訴えたことを覚えています。
私は、私生活では結婚願望があまりなくて、いまだ独身。男性より女性ファンのかたの方が多いんですが、男性への期待値が低いのは父の影響だと思っています。男が弱いと女は頑張るものなんです」