海外旅行が「特別」でなくなった時代に求められるもの
しかし、時代とともに読者層も変わりつつある。昨今は「若者がバックパッカーとして世界を放浪する」のが流行する時代ではなくなっている。
かつて海外旅行は、未知なものが溢れた“特別”な位置づけだった。しかし現在はインターネットやSNSの普及により、海外の文化や現地の人々の暮らしぶりを簡単に知ることができる。海外に対する目新しさは減少し、得られる刺激も必然的に下がっている。
また昨今の円安に加えて、これまで“激安”とされてきたアジア各国の物価も上昇しつつあり、日本人にとって“安く長期間放浪できる場所”が少なくなっている事情もある。
「かつての、バックパッカー全盛期の読者たちは現在40代から50代で、“昔お世話になった”という気持ちで今でも手にとってくださいます。それに伴って、『安宿ではなく、もう少し高級な宿に泊まりたい』というような情報も求められるようになってきました。
また旅行が身近になったことで、家族旅行、女子旅、ツアー旅行など、旅行の形も多岐にわたるようになっています。そうしたニーズの多様化に応えるべく、2010年には“旅好き女子”をターゲットにし、最旬トレンドを満載にした『aruco』を創刊。
2015年にはツアー旅行客に向けた『Plat』をスタートさせました。こちらは交通と宿泊以外の行程が自由であるパッケージツアーの利用者や、出張の合間の短時間で観光を楽しみたい人がターゲット。短い時間でも効率的に楽しめるよう、観光すべきポイントがわかりやすい“TODO LIST”や、所要時間付きの散策ルートなどを掲載する工夫を凝らしています」
読者層やニーズに対して柔軟に対応しながらも、徹底的に旅人に寄り添うという編集方針は変わらない。
「『いってらっしゃい』から『お帰りなさい』までの安全な情報を提供するというのは、いつの時代も変わらないと思っています」