納税額を賢く減らすには、「働き方」を変える選択もある──新刊『世界はなぜ地獄になるのか』がベストセラーとなり、金融・人生設計に関する著作も多数ある作家・橘玲氏は、60歳定年を機に「会社員」から「法人」になる生き方を推奨する。
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「人生100年時代」は少しでも長く働くのが当たり前、という考え方が定着してきました。
ただ、60歳の定年後も漫然と同じ会社で「再雇用」を選ぶ人が多いのが現実です。私はそれよりも、稼ぐ力のある人は定年を機に「マイクロ法人」を立ち上げ、会社と業務委託契約を結ぶことをお勧めしたい。
「マイクロ法人」は私の造語で、個人事業主の法人成り、つまりは株主と取締役が自分1人しかいない会社を指します。
法人は法的な人格ですから、マイクロ法人を設立すると、個人とは別のもうひとつの人格(法人格)を持てます。個人と法人という2つの人格を使い分けることで、様々な恩恵が受けられます。
とはいえ、会社から給与を受け取りながら法人を持っても、特殊なケースを除けばあまりメリットがありません。それに対して、定年前と同じ仕事をしながら、給与ではなく業務委託契約による委託費を法人の収入にする効果は非常に大きい。
まず何より、収入に対する税・社会保障費の負担が大幅に低くなります。
個人には所得税、法人には法人税が課されますが、その税率は大きく異なります。所得税は累進税率で、実効税率は最高約50%。それに対し、中小法人で所得金額800万円以下なら、実効税率は約23%です。
マイクロ法人では自分(法人)で自分(個人)への報酬額を決められるので、税や社会保障費の負担が軽くなるように所得配分を最適化できます。