加えて効果的なのが、控除の「二重取り」です。まず生活経費の一部を損金として法人の収入から差し引ける。自宅に法人登記すれば、家賃や水道光熱費の半額、新聞・書籍の購読料、電話やネットの通信料なども経費になる。そのうえ、法人からの給与には給与所得控除が認められ、法人と個人それぞれで課税所得を減らせます。
家族を従業員にして、年収103万円以内など税負担がない水準で給与を支払うこともできるし、経営セーフティ共済を使えば、法人の利益を最大800万円まで経費にできます。個人事業主と中小企業役員のための退職金制度である小規模企業共済に加入して、掛け金全額を個人の所得から控除することも可能です。
会社負担分の社会保険料を加えると、概算ですが、年収800万円のサラリーマンの実質負担率は約30%になります。それに対してこうした利点を積み上げ、個人と法人の所得を最適設計すると、手取りが200万円近く増えることもあります。
マイクロ法人の効果はそれだけではありません。
65歳以降、年金を受け取りながら会社員として働くと、給料と年金の合計が月額48万円を超えた場合、年金がカットされてしまいます。これが在職老齢年金の罠ですが、マイクロ法人では自分で自分に給与を払うのですから、それを超えない範囲に設定すればいい。これに年金の受給開始年齢を遅らせる「繰り下げ」を組み合わせれば、将来の年金も増えて老後資金の不安も減るはずです。