ただし、“繰り下げ=天国”かといえば、話はそう簡単ではない。特に“繰り下げプラン”を構想中の夫婦は気をつけたい。最近、夫を突然の病で亡くしたFさん(64才)が語る。
「まだまだふたりとも元気だからと、夫婦ともども70才での受給開始を予定し計画を立てていたところ、夫が突然死しました。その後に知ったのは、私の年齢で夫の遺族厚生年金を受け取ることになった場合、私の分の年金は繰り下げることができないというルールでした。
夫を失い、繰り下げ増額をあてにした老後計画も台無しになり、何よりこんなに早く先立ってしまうなら逆に繰り上げで年金をもらい、ふたりで旅行にでも行けばよかった。いまはひとり途方に暮れる日々です」
繰り下げブームのなか、男女の寿命に即した判断も求められると北村さんが助言する。
「確かに繰り下げによって年金額が増えますが、受給開始からすぐに死亡したり、健康寿命が尽きるのは大きなリスクです。繰り下げを決断するなら、そうしたリスクがあることを考慮しましょう」
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