現役時代、同じ時間、同じように懸命に働いても老後の暮らしには大差が生じる。その大きな要因は「年金」にほかならない。ただ、受け取る年金の額だけで、幸せかどうかが決まるわけではない。年金がもたらす老後生活について考えてみよう。【年金生活の天国と地獄・第3回。第1回から読む】
年金博士として知られる社会保険労務士の北村庄吾さんが語る。
「大まかに言うと、国が運営する公的年金は、20才から60才までの国民全員が加入する『国民年金』(基礎年金)と、サラリーマンや公務員などが加入する『厚生年金』の2階建てです。基礎年金は加入期間の長さ、厚生年金は現役時代の報酬で受け取る額が決まります。現役時代の働き方や、“いつから”受け取るかで金額は大きく変わるのです」
つまり一口に「年金」といっても、その内情には雲泥の差があり、それによって老後は「天国」にも「地獄」にもなり得るということ。
夫の突然死で繰り下げ無効に
老後生活の天国と地獄を分けるのは、年金の額はもちろんだが、年金の「もらい方」も重要になる。原則65才の受給開始を遅らせる「繰り下げ」を選ぶと月0.7%の増額となり、最も遅い75才まで繰り下げると84%増える。対して、受給を前倒しする「繰り上げ」は月0.4%減額され、最も早い60才まで繰り上げると24%も年金額が減る。
プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんは「いまは繰り下げブーム」と指摘する。
「65才を超えても働くことが当然となり、繰り下げによってもらえる年金を増やそうという人が増えています」