5年刻みのリタイアメントプラン
では実際、一体お金がいくらあれば平穏な老後となるのか。生命保険文化センターの「2022年度生活保障に関する調査」は夫婦で「ゆとりある老後生活を送るための費用」を月37万9000円とするが、三原さんは「そこまでのお金は必要ない」と話す。
「高齢になると食欲や物欲が減り、それほどお金が必要なくなります。いまは配信サービスなどネット経由で低価格の娯楽がたくさんあるので、年金が少なくても楽しい老後生活を送るのは可能です」
そうした自らの欲求と必要な金額を賢く見極め、先を見据えた「備え」によって幸せを手にしたのが夫婦月19万円ほどの年金で老後を過ごすIさん(70才)だ。
「決して年金は多くないけれど、家賃の安い公営住宅に住み、いらないものはネットオークションで売ったりしながら楽しく暮らしています。公営のジムやカルチャーセンターはお金がかからず、夫はもっぱら図書館通い。人生の最終盤に向けてお金の計算もしつつ、幸せに生きています」(Iさん)
37万9000円のおよそ半分の金額でも生活を見直せば、充分ゆとりある老後を送ることができるのだ。
身の丈に合った本当に幸せな老後の生活を送るために北村さんは「5年刻みのリタイアメントプラン」を推奨する。まず65才から69才、70才から74才と老後を5年単位で区切り、その期間に必要な生活費を試算する。60代後半はまだアクティブなので月36万円、体が衰え始める70代前半は月30万円……と試算し、そこからもらえる予定の年金を引き算して月に必要な額を導き出す。
「その額を目標に働いたり、貯金を取り崩す計画を立てたりするんです。最も大切なのは人生の最後までを想像して必要なお金を準備すること。それに加えて、体と心の健康を維持できるよう努力することも重要です」(北村さん)
現実を直視して未来に備えれば、年金がもたらす老後はきっと天国になるはずだ。
(了。第1回から読む)
※女性セブン2023年12月14日号