物流・運送業界の「2024年問題」が取り沙汰されているが、それとは異なるもう一つの“2024年問題”がある。2024年は、いわゆる「団塊世代」がすべて75歳以上の後期高齢者になる節目の年だというのだ。今も600万人近い人口規模をもつ“団塊”が、より手厚い医療・介護を必要とする年齢になることで、今以上に社会保障費が膨れると予想される。そこで政府が打ち出した“切り札”が「全世代型社会保障」なる制度だ。しかし、作家・ジャーナリストの河合雅司氏は、政府の思惑通りにはいかないと断じる。【前後編の前編。後編を読む】
* * *
年が明けて2024年になると、団塊世代がすべて75歳以上となる。いわゆる「2025年問題」が到来するのだ。同世代がすべて75歳以上となる年については2025年との誤解が定着しているが、厳密には2024年なのである。
75歳を超えると大病を患う人が増えるため、今後の医療や介護をめぐる公費負担の急伸が懸念されている。内閣府の資料は1人当たりの平均医療費が2019年比で2030年には10%増、平均介護費は34%増(同)と予想している。2040年にはさらに膨らみ、それぞれ16%増、63%増になるという。
次のページ:2060年、80歳以上が約2割に達する「いびつな社会」