大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

【東京23区では平均1億円突破】新築分譲マンション高騰時代「買うより借りる」がお得なカラクリ

分譲マンションの価格高騰が続き「とても手が届かない」という恨み節も聞こえてきそう(イラスト/井川泰年)

分譲マンションの価格高騰が続き「とても手が届かない」という恨み節も聞こえてきそう(イラスト/井川泰年)

 首都圏の不動産価格が上昇を続けている。東京都内の新築分譲マンションは、平均価格が1億円を突破。こうした時代では「持ち家志向から転換して、ずっと賃貸で暮らすという選択」を考えるべきだとアドバイスするのは経営コンサルタントの大前研一氏だ。これからの合理的な暮らし方について、大前氏が提言する。

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 不動産経済研究所によると、今年度上半期(4月~9月)の新築分譲マンション1戸当たりの平均価格は東京23区が前年同期比36.1%上昇の1億572万円、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)が同23.7%上昇の7836万円だった。

 東京では2014年に売り出された「虎ノ門ヒルズレジデンス」が高額物件として話題になったが、11月24日に開業した「麻布台ヒルズ」の「アマンレジデンス」は最上階の専有面積1500平方メートルの物件が200億円以上と報じられた。都心の一等地・千代田区三番町のイギリス大使館跡地に建設中の「ザ・パークハウス グラン 三番町 26」(販売価格1億4100万~11億5800万円)はすぐに完売した。それら高額物件に押し上げられた結果の「1億円超え」だが、建設資材や人件費、土地代などの高騰で、今後も新築分譲マンション価格は上昇するとみられている。

 住宅ローンの借入額の上限は年収の5~7倍と言われるが、国税庁の「民間給与実態調査」(2021年)によると、平均年収は443万円だから、平均年収では夫婦共稼ぎでも4400万~6200万円までしか借りられないことになる。頭金を4000万円以上持っていなければ東京23区内の新築分譲マンションは買えないわけで、ここまで高くなると30年以上も給料が上がっていない庶民にとっては“高嶺の花”であり、「とても手が届かない」という恨み節が聞こえてきそうな状況になっている。

これからは賃貸がお勧め

 そのような状況の中で、どんな物件にどう住めばよいのか? 私が若者たちにアドバイスをするとすれば「買わずに借りろ」だ。高すぎて買えないと嘆くのではなく、考え方を持ち家志向から転換して、ずっと賃貸で暮らすという選択をすべきだと思う。

 なぜなら、新築分譲マンションの価格が上昇していても、賃貸分譲マンションの賃料はほとんど上がっていないからである。

 不動産データバンクの東京カンテイによれば、10月の分譲マンションの賃料は東京23区が前月比マイナス0.8%の4227円/平方メートル、首都圏が前月比マイナス0.7%の3541円/平方メートルと弱含みになっている。近畿圏や中部圏も同様だ。

 分譲マンションを買って賃貸に出すのは富裕層だが、その人たちの目的は不動産からの投資リターンではなく、キャッシュフローを得ることだ。日本の銀行にカネを預けていても金利は雀の涙ほどしかつかないが、マンションなら家賃が入ってくる。しかし、空室になったら家賃は入ってこないので、借り手が見つかるまで賃料を下げていく。だから、賃貸分譲マンションの賃料が上がっていないのだ。

 つまり、分譲マンションは買うよりも借りたほうが、はるかにリーズナブルなのである。しかも賃貸なら、結婚、出産、子供の成長や独立といった人生のライフステージの変化に応じた場所や物件に移ることができる。引っ越しの時に不要になったものを処分すれば、そのたびに断捨離ができて家の中もスッキリする。それが「人生100年時代」の合理的な暮らし方ではないだろうか。

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