出勤時、自宅で前向き駐車で停めていた車をバックさせて出かけようとしたら、道路で見送ろうとしていた89歳の母親をひいてしまった――。先日この事故が報じられると、「前向き駐車」の危険性がSNS上で注目された。前向き駐車とは、駐車スペースに車の頭から突っ込む形で停めること。実際、駐車場の事故で後退時のものは多い。
交通事故総合分析センターによると、平成26~30年までの5年間累計で「駐車場等の全体」における死傷事故の件数は9万1801件で、そのうち5万3443件は「後退時の事故」。実に6割近くを占めているのだ。実生活でヒヤリとした経験をした人たちに話を聞いた。
死角が多くなって車や人を確認しにくい
商社勤務の30代男性・Aさん(都内在住)は、指定がない限りは、基本的には「バック駐車」派だ。
「前向き駐車は、周囲が民家のお店なんかで『前向き駐車』という注意書きがある時や、荷物の積みやすさを考える買い物時に限るといった感じです。お店が呼びかける場合の前向き駐車は、排気ガスや音で迷惑がかからないようにという配慮らしいですが……」
Aさんは「前向き駐車」についてこう考えている。
「前向き駐車って、入れるのは楽でも出すのが怖い。バックで出る分、死角が多くなって車や人を確認しにくく、難易度が上がります。郊外や地方のだだっ広くてガラガラの駐車場なら前向きも後ろ向きも関係ないですが、都心の狭い駐車場では避けたいところです」(Aさん)
実際、Aさんは前向き駐車時にヒヤリとした体験があるという。
「コンビニで前向き駐車をし、出る時のことです。小学生くらいの男の子にぶつかりそうになりました。平日で、しかも午前5時ごろという早朝だったので『誰も来ないだろう』という思い込みもありました。
後退し、ハンドルを右に切ってから前進しようとしたところ、目の前に男の子が飛び出して来て……あわやという感じでした。バック駐車では、出る時に周辺の安全確認ができるメリットはやはり大きいですね」(Aさん)