河合雅司「人口減少ニッポンの活路」

【郵便事業が赤字になる本質的な問題】投函が「月に0~1通」のポストが全国で6800本 人口減少社会におけるユニバーサルサービスの破綻懸念

改めて問われる「郵政民営化」の是非

 経営の合理化に逆行するようなことを、利益を上げなければならない民間企業に求めること自体に無理がある。日本の人口減少は止めようがなく、このままならば民間企業として行うユニバーサルサービスはどこかの段階で破綻する。2018年に「郵政事業のユニバーサルサービスを安定的に確保するため」として交付金・拠出金制度が創設されたが、こうした動きが出てくるのも将来的な行き詰まりの可能性を認めているからであろう。

 それでも日本郵便にユニバーサルサービスを求め続けようとするならば、郵便事業以外で多大な利益を上げられるようにするしかない。それができないのであれば、行政サービスとして国家の運営に完全に戻すのか、法律の改正を含めて人口減少時代に即した形とすべくユニバーサルサービスの定義の見直しを迫られることになるだろう。人口減少が進むことが分かっていながら郵政を民営化したことの是非が改めて問われているのだ。

 最近は、利用者全体で負担を分かち合うユニバーサルサービスの仕組みに対する不満の声も聞かれるようになってきた。全国均一料金を維持することを優先して、コストが多くかかる遠隔地や過疎地への配達料金を抑え込んでいることへの不公平感だ。

 SNSには「コストのかかる離島や山間地への郵便は応分の料金負担を求めるべき」、「人口が密集する大都市圏内だけに限定したサービスを創設すれば、もっと値下げできるはずだ」といった意見もある。人口減少で人口の偏在がさらに進めば、郵便事業に限らずこうした要望はさらに強くなるだろう。

 総務省や日本郵便が本質的な問題の先送りを続けようにも、いずれはユニバーサルサービスのコストをどう賄い、配達要員をどう確保し続けるのかという現実にぶち当たる。各地の商圏を消滅させていく人口減少が、郵便局・ポストの統廃合や、地域別料金といったこれまで“触れることが許されなかった選択肢”の検討を迫りつつある。

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【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。主な著書に、ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。

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