老後資金の頼みの綱である「年金」だが、2025年からは65才まで年金保険料を納めるようになる可能性が高まっている。将来の年金水準の見通しを示す「財政検証」が今夏にも行われる予定で、現在、それに向けて「国民年金保険料の納付期間を5年延長する」という案が検討されているのだ。【国民年金の損益分岐点・全4回の第4回】
いま、国民年金は20才から60才までの40年間納付して、原則65才から受給開始となっているのは周知の通り。現行制度では月1万6520円、40年間で総額792万9600円の保険料を払っている計算になる。だがもしこの改定案が実現すれば「65才までの45年間」保険料を払わなければならなくなるのだ。
「年金博士」ことブレイン社会保険労務士法人代表の北村庄吾さんは「5年間でざっと100万円ほどの負担増になる」と説明する。保険料の納付期間が65才まで5年延長されることで、原則65才となっている受給開始年齢も5年後ろ倒しになり「70才から受給開始」になる可能性も大いにあり得ると、北村さんは言う。
厚生年金加入者にはプラスも専業主婦、自営業者には損に
年金の受給額は、物価や賃金の伸び率よりも低く抑える『マクロ経済スライド』という仕組みで決められる。つまり、物価に対する年金額の目減りはほぼ確定事項。そうした状況で年金保険料の納付期間が延長されれば、こんな「不公平」も起きる。
「今回検討されているのは、『国民年金』の5年延長のみ。会社員と公務員が加入する厚生年金の加入期間延長も以前から議論されていますが、厚生年金の期間延長は国民年金ほどの影響はありません。
もし、60才から65才までの国民年金加入が強制された場合、その保険料は月1万6520円。それに対し、パートなどで月収10万円ほどを稼いで厚生年金に加入している人の場合、その保険料は収入の9.15%に当たる9150円で済む。厚生年金加入者は実に7370円も得する形になるのです」(北村さん)