キャリア

オバ記者・66才が考える“これからの高齢者の生き方”「自分の器量にあった働きをしてお金を得て気ままに暮らす。これ以上の幸せってあるかしら」

人と自分の幸せ比べをしなくなった

 数か月前のこと。バイト先の衆議院議員事務所から仰せつかった仕事が、自衛隊家族会のアテンド。34名の人たちとともに防衛省と国会議事堂内を歩いて、ご案内したわけ。その34名が防衛省の省内食堂でランチを食べるというの。

 大丈夫かしら!?と思うと、私って体が勝手に動くのね。たとえばカレーをひと口食べたら、これはお水のお代わりが欲しくなる、と思うと同時に食堂に行って、「これを1台、テーブルで使っていいですかぁ。終わったら戻しておきますから」と交渉して、ひと抱えほどある保冷水ジャグをテーブルに運んでいったわけ。さんざん歩いてくたびれている年配の見学者たちは次々にコップを差し出して、「気が利くねぇ」と喜ぶまいことか。で、食事の後、私より少し年上の女性が私のところに来て、「あんた、仕事できるわぁ。いや、仕事が何かわかってるッ。私、感心しちゃった」とほめてくれたのよ。

 それだけじゃない。防衛省の次は国会議事堂見学だ。みなさんの体力を考慮して、フルコースではなくハーフコースに勝手に変更して、要所要所で声を張り上げたら、今度は私と同世代らしき男性が「すごい、すごい。あんたの言葉、すごくわかりやすくてすんなり入ってくるよ」と言ってくれたの。

 うれしいなんてもんじゃないって。そりゃあ、私だって編集者に文章をほめてもらえることもあるし、街で「オバ記者さんですよね?」と声をかけられることもあるのよ。本業で評価されることがあるから、こうして書く仕事を続けていられるんだけど、この日の2人のホメ言葉は私という人間の根源的なところを勇気づけてくれた気がする。

 YouTubeなどを見ると、「60才過ぎたら大変なことになる」とか「悲惨な老後」というタイトルが並んでいて不安をさんざんあおられるけど、見れば、発信者はみんな40代50代。そこから見たら、私たちのような60代は表舞台から降りて楽屋の掃除をしている哀れな老人に見えるんだと思う。きっと私も彼らの年頃にはそう思っていたと思うもの。でも実際にその年になったら、まったく違うんだって。

 そもそも、人と自分の幸せ比べをしなくなったもの。定年後、1人2000万円以上の貯金があり、たっぷりの年金をもらって、やさしい夫と心配をかけない子供や孫に囲まれた、バリバリ健康な美シニア。ネットの中にはそういう生活を他人に見せつけようとする人がいるけど、先祖が違うとしかいいようがない。違う言い方をすれば、“DNA”とか“分”が違うといってもいいかもしれない。

 そんな人と自分を比べるだけムダ、てか、それと私の幸福は無関係よ。私は私で、いまできること、人から評価されることはまだまだある。寂しさと解放感と小さな日々の達成感。そして自分を養う仕事。これを存分に味わう「前期高齢者2年生」が始まると思っているの。真っ白いカレンダーにどんな絵を描くかは私次第。

 おめでたい? そりゃあ、お正月ですもの(笑い)。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子。1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

※女性セブン2024年1月18・25日号

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