著名人であっても病気になれば、当然、医療費の負担と向き合わなければならい。そのリアルケースを紹介しよう。俳優の村野武範さん(78)は、70歳になった2015年に「ステージIVの中咽頭がん」と診断された。
「CTやMRI、全身のがんを調べるPETなどの検査を受けて、舌の付け根からリンパ節に転移していると告げられました。医師からは『余命は聞かないほうがいい』とまで言われました」
村野さんは「医者の言うことは絶対」と思い、諦めかけたと振り返るが、「妻がネットでいろいろと治療法を調べてくれた」という。そこで見つけたのが「陽子線治療」だった。
患部のみに放射線を照射し、身体への負担が少ない治療法だが、先進医療のため村野さんの中咽頭がんでは自由診療(2016年から小児がんなどの一部で保険適用)で、治療費は全額患者負担となる。
そんななかで、村野さんは70歳を前に保険内容を見直していたことが身を助けたという。
「40代から月々の保険料が2000円弱のがん保険に入っていましたが、ちょうど診断される1年ほど前に『先進医療保険』に切り替えたところだったんです。保険料を長年払ってきたからか、切り替え後は月99円と驚くほど安く済んだ。しかも、この保険は入ってから1年以上経たないと適用されないのですが、見つかったのがちょうど1年が過ぎたタイミングだったんです」
夫妻は、陽子線治療が受けられる福島県の病院にかかった。
「そこの先生に『うちで治療できますよ』と言われてホッとしました。治療費は300万円ほどかかると説明されたが、先進医療保険が適用されることもわかり、費用面の心配もありませんでした。
2か月半も入院したのですが、退院時に支払った入院費用も後で全額保険で戻ってきた。あれに助けられました」