『スタ誕』からデビューした城みちる「ファンは“戦友”」
同番組が生んだスターのひとりである城みちる(66才)は「『スタ誕』が唯一の歌手への道だった」と振り返る。1973年に第7回大会のチャンピオンに輝いた城は、同年リリースのデビュー曲『イルカにのった少年』が50万枚の大ヒットを記録した。
「ぼくがデビューしたのはいまから50年も前。あの頃は天地真理さんや“新御三家”の郷ひろみさん・野口五郎さん・西城秀樹さんがものすごい人気で、憧れの存在でした。だけど当時はネット配信もSNSもないから、広島の片田舎に住んでいたぼくにとって芸能界はものすごく遠い存在。歌には少し自信があったけれど、どうやって歌手になればいいのかわからない。そんな中、ぼくと芸能界をつないでくれたのがオーディション番組だったんです」(城・以下同)
知人から譲ってもらった予選会出場のはがきから、トントン拍子にデビューが決まったという城だが、そのスピード感についていくのは至難の業だった。
「もちろんうれしかったけれど高校生になりたてで上京したぼくにとって、東京の地理も業界のことも何もかもが未知の世界。周囲のスタッフたちはずいぶん年上で、自分の意見や意思を伝えるのにも躊躇してしまうこともあって、せっかく夢が叶ったものの戸惑う場面は少なくありませんでした」
環境の変化に思い迷う城の支えになったのは、彼を“推し”てきたファンの声だった。「『スタ誕』は視聴者投票こそなかったものの、ステージや収録では応援合戦がすごくて、ライバルへの声援に負けないようファンの人たちが一生懸命に声を張ってくれたのは本当に心強くうれしかったです。
あんまりにも一生懸命応援してくれるから『みんな学校はどうしているのかな』と心配になったくらいです(苦笑)。大げさかもしれませんが、当時から応援し続けてくれたファンは共に戦いを乗り越えてきた“戦友”。『あの頃のみちるはファンに冷たかった』なんて言われながらいまだに交流があります(笑い)。当時学生だったファンが『孫ができた』と報告してくれることもあって、感慨深い気持ちになります」