ダンススクールも芸能事務所もない町に生まれた少女が、テレビの前でアイドルの真似をして歌っていた少年が、観客の熱狂のもと、一夜にしてスターになる。憧れ、親心、未来への投資……「オーディション」という“夢物語”に我々は何を見るか。【全3回の第1回】
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《いよいよラストスパート! 清き1票を!》
ある人はX(旧ツイッター)で投稿を繰り返し、ある人は会社の同僚に呼びかけ、またある人はビラを作って配り歩く──。昨年末、遅れてきた寒波に覆われた日本を熱狂の渦に巻き込んだのは、サバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』だった。
通称“日プ”と呼ばれる同番組は2016年に韓国で誕生した視聴者参加型のオーディション番組『PRODUCE 101』の日本版にあたり、過去に放送されたシーズン1ではボーイズグループの「JO1」を、シーズン2では「INI」を輩出。いずれのグループも、いわゆる“一般人”だった彼らが一夜にしてスターになり、記録的なCD売り上げを連発して、YouTube再生回数1億回を突破するなど驚異的な人気を誇る。
シーズン3となる今回は、初のガールズグループのオーディションとして大きな注目を浴び、過去最多の約1万4000人の応募者から101人の練習生が選ばれ、デビューする11人の枠をめざして熾烈な争いを繰り広げた。芸能界随一の“日プファン”としてシーズン1から見守ってきたというニッチェの近藤くみこ(41才)は、その魅力をこう語る。
「日プの最大の特徴は、視聴者が『国民プロデューサー』(通称、国プ)として“投票”という形でオーディションに参加できることにあります。
特に初の女性グループの選抜が行われた今回は、ダンスや歌がハイレベルな練習生が集まって鎬を削って想像以上に盛り上がり、投票にも熱が入りました。私は歌が好きなので歌唱力が高い子に注目していて、なかでもオーディション時に宇多田ヒカルの『First Love』を歌い上げた高見文寧ちゃん(18才)には、“え、この子、何者!?”と衝撃を受けました」