24時間365日オーディションの時代がやって来る
スカウトマンがプラカードを掲げた『スター誕生』から半世紀かけて「SNS選挙」が白熱した現代の日プにたどり着いた日本のアイドルオーディションはこの先、どこへ向かうのか。
「この50年でオーディション番組に起きた大きな変化は、視聴者が審査員になったことに加え、オーディションの舞台がテレビからインターネットに変わったことです。テレビのなかでプロデューサーや芸能事務所が審査していた風景は、スマホで国民が投票する光景に劇的に変わりました。現代はまさに国民一人ひとりがプロデュースする時代。たんなる人気投票ではなく、推し活がアイドルの誕生に結びつき、ファン自らアイドルを生み出す時代になったんです」(アイドル評論家の中森明夫さん)
実際、日プはテレビではなくドコモの動画配信サービス『Lemino』によって爆発的な人気を博した。グループ全体ではなく、推しのメンバーだけを追いかける「推しカメラ」の導入など、テクノロジーの発達もファンの推し活を後押しし、裾野を広げたといえるだろう。これから先、国民の“審査員化”はさらに進むと中森さんは指摘する。
「韓国では、ネットを通じた人気投票が1秒ごとに進行し、事務所サイドはその数字に従ってプロデュース方針を決定しています。オーディションの極北であり、SF的な世界です。おそらく近い将来、24時間365日オーディションが続く時代がやって来るでしょう。現在はその歴史的な転換期なのです」
番組の終了時間を過ぎてもファンはアイドルの振る舞いをチェックし続け、アイドルもそれに応える時代がやって来れば状況はさらに大きく変わっていくだろう。『スター誕生』でチャンピオンになり、1973年にデビューした城みちる(66才)は、こう話す。
「ぼくらの世代は“アイドルらしい受け答え”を求められていたけど、最近の若い子は歌やダンス、トークの才能にあふれて、立ち居振る舞いも自然体でキラキラしています。それは時代が作ったものでもあり、オーディションを勝ち抜いた自信・実力でもあるのでしょう。あれほど輝けるのなら、ぼくは生まれ変わってもまたアイドルオーディションを受けてみたい。やっぱりアイドルオーディションには、それだけの強い魅力があるんです」
まっすぐに努力する姿、敗者になってなお諦めない強い心、一躍スターになった輝き──作りものではない、本物のドラマに私たちは魅せられ続けるのだ。
(了。第1回から読む)
※女性セブン2024年2月1日号