中国・上海市場に上場する日経225連動型ETF(華夏野村日経225ETF)が1月17日、場中で一時売買停止となったが、市場関係者の間では、それが同日場中における日経平均株価急落の要因とされた。そのほか、今年に入ってからの日本株ラリーに中国人投資家の買いが大いに影響したのではないかといった見方をする関係者もいるが、実態はどうなのか。結論から言えば、アナウンスメント効果を除けば、彼らの挙動が実際の日本株市場に与えた影響は、ほぼ無視できるレベルだと思われる。
上海市場には日経225に連動するETFが4本あるが、流動性が最も高い華夏野村日経225ETFですら、その市場規模は1月16日現在、6億5800万元(135億8480万円、1元=20.6円で換算)に過ぎない(北方網Wind資訊データより)。
中国の市場開放は遅々として進んでいない。まず、為替市場では資本取引目的での人民元の外貨への交換は原則として禁止されている。つまり、本土投資家は自由に外国株を買うことが許されていないということだ。例外として、当局が認めた適格国内機関投資家のみが一定の枠の範囲で人民元から外貨への交換が許され、その外貨を用いて外国株を購入できたり(QDII)、本土市場を通して人民元で香港市場に上場する一部の株式を売買する制度(ストックコネクト制度)を通して、個人投資家が香港上場株などに投資できたりするぐらいだ。
日経225連動型ETFに話を戻すと、いきなり流通市場で需要が急増しても、それに見合うだけの供給を増やすことは困難だ。というのも、日経225にスムーズに連動させるには、発行市場において柔軟にETF受益権が設定される必要があるが、運用会社のQDII枠の問題からそれが難しい。結局、前述ETFの運用会社(華夏基金管理有限公司)は1月19日時点で、3日連続で一時的な取引停止を繰り返し、7度にわたり「流通市場における価格は明らかに日経225によって決まる基準価値と乖離しているので、盲目的な投資をすれば重大な損失を被る可能性がある」と警告、需要の鎮静化を訴えている。
中国の経済成長率が低下しているとか、金融相場が低迷し、見通しが悪いとかいった理由で国内資金が簡単に国外に流出するようなことは、制度上起きにくい。もちろん、規制の網を潜り、違法に資金を流出させようとする富裕層もいるが、当局の監督管理は厳しい。資産を没収されるリスクを冒すほど勇敢で、規制のすり抜けに自信のある富裕層は限られる。そうした資金の規模が大きくなり、それが日本市場に流入し、株価を押し上げたり、あるいは積み上がった資産の流出で急落させたりするようなリスクは小さいだろう。