このIFRS適用にあたって、2022年から、投資家にむけてIFRS適用の影響などを解説する機会を設け、その影響を前向きに受け止めてもらえるよう努力を続けていました。その結果、好意的な評価を作り出し、時価総額も大きく向上させました。
マネーフォワードやライフネット生命は、主に消費者向けの事業を行っている、いわゆるBtoC 型の企業です。しかし、BtoCに限らず、BtoB型のビジネスを行なう企業でも、その動きに注目したい企業があります。今回は、そのような3社の企業を紹介したいと思います。
True Data(4416)
True Data(4416)は、ID-POSと言われる次世代型の消費者動向データベースを活用し、国内最大規模の6000万人におよぶアクティブな購買データをもとに、データ分析サービスやコンサルティング事業を行っています。2021年の上場前から広報活動に積極的で、豊富なデータをメディアに提供し、メディア露出の機会も多くあります。
業績は上場後に黒字転換し、その後も増収増益を続けていますが、事業規模がまだ大きくないこともあって、時価総額は20億円程度と上場時の4分の1程度にとどまっています。社名やサービス名の知名度を高めるための広報活動には積極的でしたが、自社を取り巻く業界状況や業界の展望に関しての広報をあまりやって来なかった印象です。このことは、時価総額が伸び悩む一つの要因なのではないでしょうか。
しかし、変わる兆しがあります。昨年11月に行われた決算説明会では、冒頭で米倉裕之社長が「今、世の中ではDXの民主化が行われようとしている」と、業界や事業環境の見通しを説明しました。これは今までの決算説明会ではなかったものです。
会社側によると、今後、自社サービスに関わる情報発信にとどまらず、ビックデータやDXなどのデータ分析に関わる動向や展望に関しても投資家やメディアに対してレクチャーするなど「教える」活動を強化していく方向に進み始めたように筆者には映りました。
グーグルと連携し実績をあげるなど、ビジネスの分野ではすでに高い評価を得ている同社。着実な業績伸長とともに、投資家からの期待値、評価値を反映する時価総額をどう高めていくのかにも注目です。
Mipox(5381)
Mipox(5381)は、微細表面加工の液体研磨剤メーカーです。研磨を中心とし、「塗る・切る・磨く」の領域への事業展開を進めています。
今期は、ハイテク関連の需要減少の影響で赤字転落の見込みですが、栃木県鹿沼市の自社工場施設に本社を移転し、生産、サービス体制の強化を進めるとともに、半導体関連需要の取り込みも図り、今後の成長期待が高まっています。
同社は、2022年に「研磨ラボ」という自社メディアを立ち上げました。自社の製品の知名度向上に留まらず、研磨という領域をひとつの「カテゴリー」として、投資家や広く社会に認知、浸透させようという取り組みを積極化してきています。
今年1月、筆者が栃木県鹿沼市の本社を訪ねた際、渡邉淳社長は、「鹿沼に投資家や記者を集めて、実際の工場を見学してもらいながら、研磨というビジネス領域を知らしめていきたい」と熱く語っていました。投資家やメディア関係者は東京に集中しており、鹿沼市までわざわざ人を来させるのはハードル高いのではないかと思う部分もあります。それでも、半導体関連にも広がる「研磨」ビジネスそのものの認知度を上げることができれば、これまでとは異なる評価をされる余地が大いにあるのではないでしょうか。
Casa(7196)
Casa(7196)は、保証ビジネスを行っており、主力の家賃保証に加えて、養育費保証なども手掛けています。
近年は、大口取引先であった仲介会社との取引を見直し、中堅中小の代理店を自ら開拓する事業改革に取り組むとともに、賃貸不動産のオーナー自らが管理を行う自主管理市場をコアターゲットに据えた展開を図っています。自主管理市場向けの情報サービスを運営するグループ会社の育成を進めるとともに、昨年には不動産システム会社を買収するなどで、サービス基盤を強化しました。
業界の中で「自主管理」の存在を高めるべく、近年は情報発信に積極的に取り組んできています。グループの運営体制整備を受けて、自主管理を行っているオーナーに向けた情報発信から、今後は広く一般に向けても、「自主管理」業界の存在を認知させる取り組みも強化するようです。
空き家問題などが社会問題になってきており、オーナー自らが物件を管理し、住居系不動産を活性化させる動きが注目される可能性はあるでしょう。
信用保証ビジネスは、さまざまな分野を取り込みながら成長を続けている領域でもあり、その中で「自主管理」に社会的な存在感が生まれてくれば、個人投資家にとっても面白い存在になります。