「何もあげないほうがよかったかな…」
自立した相手に向かって余計なお世話とは知りつつも、心配なユミコさんは息子に「お金が足りなくなっていないか」と聞いたそうだ。
「『親孝行のつもりだったけど、心配かけるくらいなら何もあげないほうがよかったかな……』とガッカリ呟いたんです。私が余計な心配をしたせいで、息子を落胆させてしまったと深く反省しました」
色々と心配しすぎて失敗したユミコさんを尻目に、同じプレゼントを手にした夫は周囲に自慢しながら毎日使っているそうだ。「息子の懐事情を気にしすぎてプレゼントを喜べない私は、なんだか損をしているような気もします」ともこぼしていた。
親としては本来嬉しい気持ちになるはずなのに、自立した子供からのプレゼントが素直に喜べない理由の一つには、近年の物価高に賃金が追いつかない経済情勢があると感じた。細かい遠慮が不要な親子関係だとしても、それぞれの経済事情の変化は外からはわかりづらい。親孝行が目的なら、労いの言葉をかけたり顔を見せるなど、お金よりも気遣いが喜ばれる時代なのかもしれない。
【プロフィール】
吉田みく(よしだ・みく)/埼玉県生まれ。大学では貧困や福祉などの社会問題を学び、現在はフリーライターとして人間関係に独自の視点で切り込んでいる。マネーポストWEBにてコラム「誰にだって言い分があります」を連載中。同連載をまとめた著書『誰にだって言い分があります』(小学館新書)が発売中。