コロナ以前と以後では、社会のさまざまな場面で行動や価値観、認識の変化が生じている。「就職」もその一つだろう。大学を出て新社会人となったばかりの20代男性に、フリーライターの吉田みく氏が話を聞いた。
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新型コロナウイルスと向き合う日々が続く中、迎えた2度目の春。厚生労働省と文部科学省の調査によると、今春卒業の大学生就職内定率(2月1日現在)は89.5%だった。コロナ禍により就職内定率は10年ぶりに悪化したというが、それでも多くの新社会人たちが企業に入社した。
コロナ以前は新入社員が一同に集まっての入社式が当たり前であったが、今年、トヨタ自動車はオンライン形式、パナソニックでは代表の新入社員8名のみが出席(その他はオンライン参加)、キリンホールディングスは感染症対策を行ったうえで役員との「対話会」を本社で行うなど、コロナ禍ならではの多種多様な入社式となったようだ。
都内在住の伊藤和樹さん(仮名・22歳)は、今春からPR会社に就職した。入社式はオンライン形式で行われたという。コロナ禍の就職活動ということもあり、かなり苦労して勝ち取った内定だったそうだ。そのため家族も大変喜んだという。
「オンライン形式の面接もあれば、企業に直接足を運ぶケースもありました。密になりやすい電車に乗るのは正直怖かったです。でも就活をしないわけにはいきませんので、感染症対策には人一倍気を遣ったと思います」(伊藤さん、以下同)
入社が近づいてきた年明け、伊藤さんは家族からあるものを受け取ったという。
「両親から『就職おめでとう』と言われプレゼントされたのは、革製品で有名なブランドの名刺入れ。いつも応援してくれている両親へのお礼は、初任給で返そうと思います」