いま大学卒業を控えている学生たちの多くが、4月から新社会人となる。学費を払って学校に通ってきた生活から一転、今度は自分で働いてお金を稼ぐようになるのは、自身のキャリアにおける大きな転換点となるだろう。そうしたなか、初任給や初ボーナスの使い途としてよく選ばれるのが「親への感謝のプレゼント」だろう。晴れて社会人となった誇らしい気持ちを表す振る舞いでもあるが、受け取る親によっては複雑な気持ちになることもあるようだ。親への感謝の気持ちをどう表すのが正解なのか──。それを考えるきっかけのひとつとして、社会人1年目の息子を持つ50代主婦のケースを、フリーライターの吉田みく氏がリポートする。
* * *
外資系生保のPGF生命が40〜69歳の男女2000人を対象に行った「『おとなの親子』の生活調査2023」によると、「これから親孝行としてしたいこと」の質問に、「旅行をする」と答えた人が最多(333人)だった。以下、「会いに行く・顔を見せる」(2位・273人)、「介護をする」(3位・83人)、「一緒に食事をする・ご馳走する」(5位・66人)などが続くが、例えば「金銭的な援助をする」は10位(28人)と少なかった。モノやお金を渡すより、手間や時間を割いて共に過ごすことを「親孝行」と思う子供が多い傾向があるようだ。
様々な親孝行のかたちがあるなかで、子供からの厚意に頭を抱えてしまうケースもある。埼玉県在住の専業主婦・ユミコさん(仮名、50歳)は、社会人1年目の息子がくれたプレゼントを「素直に喜べなかった」と打ち明ける。
「一人暮らしをしている息子が年末に帰ってきました。『いままで育ててくれてありがとう。年末に特別ボーナスをもらったよ!』と、私と主人それぞれに高級ブランドのマフラーをプレゼントしてくれたんです。思いがけない、素敵なプレゼントですごく嬉しかったのですが、『いくら使ったのか』と考えると複雑な気持ちになってしまいました」(ユミコさん、以下同)
さすがに金額は聞けず、調べてもいないが、「定価だと2本で5万円は超えていそう」な品だったという。ユミコさんの息子は「親にもオシャレを楽しんでほしいから、今回は奮発した」と語ったそうだ。
「息子は大手メーカーの営業職で、正社員として働いています。住居費などの福利厚生が充実しているとはいえ、1年目で給料がそこまで高いとは思えません。普段からちゃんと食べているかが心配なのに、高額なプレゼントをもらったところで、無理していないかと気が気じゃないんです」