「個別指導塾」も勧められたが…
A子さんの姉は「個別指導を利用したら? 私が費用を出すから」ともいい出したという。
姉が紹介したのはマンツーマン指導として評判が良い個別指導塾のサイトだった。一瞬、「それならSAPIXを続けられる。桜蔭を狙えるかも」と心が揺らいだが、難関校で高校教諭をしている夫が首を横に振った。
「さすがに塾代まで出してもらうのは“申し訳がない”という気持ちになったようです。それに夫は無理をして難関校に入れてもその先が続かないと考えていました。そこで、娘と話し合って四谷大塚に転塾させることにしました。通いやすいところにあるのと、家庭に負担がないシステムになっているからです。それで本人の力に合ったところに入ればいいと思いました。私の姉にしても、自分のペースで勉強をした先に、桜蔭があっただけですから」
「なにがなんでも最難関女子校」というこだわりを捨てれば、他の塾でも十分だと判断したわけである。今回は、A子さんの娘さんの転塾の経緯を紹介した。共働き夫婦でもその忙しさはさまざまだが、A子さん夫婦は常勤の教諭同士で仕事が忙しく、親が頑張らないといけないSAPIXには合わなかったわけだ。
次回は、SAPIXがトップ塾になっていった経緯と理由について言及していこう。
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)では小説『ボリュゾっていうな!~ギャルママが挑む“知識ゼロ”からの中学受験ノベル~』を連載。